歯科におけるインプラント治療をざっくりと説明すると、
①歯槽骨に孔を作る
②その孔に人工歯根を埋め込む
③歯槽骨と人工歯根が骨結合後に被せ物を装着
④メンテナンス
となります。
「インプラント」という言葉は歯科用語のように思われていますが、体内に埋め込む医療機器や材料の総称です。
心臓ペースメーカーや人工股関節、骨折時の固定に使用するボルトもインプラントと呼びますので、歯科ではデンタルインプラント、人工歯根と表現するのが正しいと言えます。
「インプラント=歯科治療」と思われるほど普及しました。
今回は「①」の歯槽骨に孔を作る方法についてご説明したいと思います。
※画像は骨を出来るだけ削らないインプラント手術法講演会の一コマです。
歯槽骨に孔を作る方法とは
歯科にインプラント治療が取り入れられたのは1960年代です。
それ以前にも歯の代用材料を歯槽骨に埋め込む治療はありました。ルビーなどの鉱石を釘のように削って歯の代用にしていたであろう人の顎の骨が遺跡から出土しています。
しかし、骨とチタン金属が結合するという現在のインプラントが臨床に応用されるようになったのは1960年代からです。
インプラントを骨に埋めるには骨に下穴を掘る必要があります。その方法としてドリルを使うというのが一般的なのですが、その方法がインプラントのネガティブ要素となっています。
■インプラントの外科的なネガティブ要素
・骨を削る際に神経を傷つけたことによる麻痺
・同じく、静脈を傷つけたことによる出血
・骨を削る時の摩擦熱による骨火傷
これらのネガティブ要素はインプラント治療の失敗につながり、インプラント治療のマイナスイメージとなりました。
ただし、インプラント治療には入れ歯やブリッジでは実現できない、
・残った歯を守る・
・歯を失う負の連鎖をくい止める
などのメリットもあります。
そうであれば、骨を削らない、ドリルを使わない方法で歯槽骨に孔を作る方法があればインプラントのネガティブ要素を払拭できると思い、考え付いたのが大口式(OAM)インプラントです。
骨を削らずにインプラントを埋める孔を作ることができるようになってからは、インプラントの外科的なネガティブ要素はなくなりましたので安心して手術を行えるようになりました。
骨の構造とは
骨って硬いイメージがあるかと思いますが、石のように硬いわけではありません。
骨の構造は大雑把ですが、皮質骨と呼ばれる外側の部分と内側にある海綿骨に分けることができます。
皮質骨はたしかに硬いのですが、さほど厚いわけではありません。CTで確認すると1~2ミリ程度です。
海綿骨はスポンジのような骨でスカスカです。
※外側の白色がやや濃い部分が皮質骨です。中身の灰色部分が海綿骨です。
この症例は大口式インプラントで前歯にインプラントを植立して12年後に撮影したCT画像です。
12年経過してもインプラントの周囲にしっかりとした骨が存在していることが確認できます。
おわりに
発想の転換、既成概念を見直すことでリスクを軽減、新たな価値が産まれると言われます。
インプラント治療も同じで、骨をドリルで削ることに起因しているネガティブ要素は骨をドリルで削らない、骨を削らない方法を選択すれば払拭できます。
ホームページ内ではイラストを使用してご説明していますので参考になりましたら幸いです。